PIXAR お金の話 -Book Review

PIXAR お金の話 -Book Review

こんにちは。ピクサー映画大好きなkurokoです。

若干今更感がありますが、PIXARの本を読みました。

 

この本は、PIXARのCFO(ローレンス・レビー)が書いたノンフィクションビジネス本で、PIXARの上場前夜から上場までの試行錯誤、スティーブ・ジョブズとタッグを組んだ奮闘記が記載されています。

 

今でこそピクサーという会社のことを知らない人はいないと思います。
私がこの本から学んだこと、本を読んで考えた事は主に以下の4つです。

 

  • ピクサーはあのカリスマジョブズがストーリーやデザインに関わり華々しく構築されたエンターテインメントのスタートアップと思っていましたが、全く違いました。
  • エンターテインメント企業の経営とクリエイティブの関係がどのようなものであるのか。如何に経営が意味がないもので、意味あるところに注力すべきかの大切さがよくわかります。
  • ディズニーという帝国の圧倒的な強さと、素人でもどのように戦うかのロジックをどのように積み上げていけば良いか。
  • 利益追求型の企業に疑問を持っている人への一つの回答がここにはある

このブログでは、主に上記について、本に記載されていることからさらに深掘りして行こうと思います。

 

スティーブ・ジョブズはピクサーではほぼ何もしていない

スティーブ・ジョブズといえば、Appleを創業し、途中で役員を追い出されるも、10年を経て復帰し、iMacからiPod、iPhoneとまさに時代を変える製品を産み出した現代のカリスマ経営者です。

Apple製品大好きな私は、当然ピクサーにおいても、トイ・ストーリーなど、あの素晴らしいストーリーやキャラクターデザインはスティーブ・ジョブズがしっかり関わり作られたものだと信じていました。

ですが、実際には違ったようです。

 

スティーブ・ジョブズはその制作にはほとんど関わっていません。
ピクサーの初期には、スティーブ・ジョブズはむしろ映画制作には口出すなと煙たがられていました。
彼は、投資家として出資し、映画制作に必要なお金を拠出していた。そして上場やピクサーの権利の最大化のために、経営者として手腕を奮っていたのです。

そもそも、1980年代初頭にルーカスフィルムからスピンアウトしたピクサーにお金を入れることを決めたきっかけは、ソフトである映画やストーリー、映像処理に目をつけたのではなく、ハードとしてのコンピューターグラフィックスが使えると考えての事だったようです。
しかし、ハードとしての事業性には失敗し、資産価値は全く無いことがわかります。
その失望の中、1991年にディズニーと不平等条約のような契約を結んでしまいます。

 

この本の物語はその3年後、トイ・ストーリーが公開される1年前から始まります。

ローレンス・レビー(この本の筆者)がスティーブ・ジョブズから一本の電話をもらい、当時は成功も約束されていない全くの無名のピクサーの会社のCFOになって欲しいという話から始まります。

 

当時のローレンス・レビーは、ピクサーに入らなくても問題の無い、あるスタートアップのCFOで十分な地位にある方でした。
そのローレンスもピクサーに呼ばれて入るかどうかを非常に葛藤します。

最終的には入るのですが、周りからもその判断が妥当では無いというアドバイスを多々もらっている中での判断です。
想像するに、ジョブズからの依頼であったこと。チャレンジできる環境。そして、ピクサーのコンテンツ力に魅せられたのだと思います。
本の中でローレンスはトイ・ストーリーの10分程度のサンプル動画を見て、世界観が変わるような感覚をおぼえたという話があります。

 

スティーブ・ジョブズの当時の名声とピクサーのコンテンツ力がこの成功への道の一歩にあったのだろうと思います。

 

クリエイティブと経営は切り離す必要がある

二つ目に明確に語られているのは、クリエイティブと経営を切り離す必要があるという事です。

ピクサーの経営層は、ある時期にクリエイティブの言う事に一切口を出さずに、クリエイティブの判断を優先すると言う事を決めています。
これは、ディズニーに買収された後も維持され、むしろディズニーの映画チームにその考え方・文化が移植されてることになったと本では読み取れます。

 

私はコンサルティングを生業としていますが、クリエイティブと経営を切り離すという事を助言するにはあまりにも無力感を感じますし、それで良いのかと言う疑問すら感じます。

しかし、スティーブ・ジョブズ含むローレンスCFOなどは、この考えを率先して主張しています。
特にピクサーの会社の話をCFOなど経営層が語る本であれば、通常、クリエイティブに対してどのように関わるかと言う有効な話を書きたかったはずです。
(それがなければ、ピクサーと言う本についてかなり片手落ちになると言う恐怖もあったはず)

しかし、結論としては、経営とクリエイティブは切り離す。

これが成功の要因だと決め、そして、その後トイ・ストーリー以上のヒットを続け様に記録していきます。
トイ・ストーリーの成功でさえ、このくらいのヒットが何度もできるわけではないと言われていましたし、歴史上もアニメーション映画のヒットは限定的でした。
そのような常識を覆し続けたと言う意味でもピクサーは本当に稀有な存在です。

 

ディズニー帝国の強さと素人でもどう戦うかのヒント

この本を読んでいると、エンタテインメント業界、特にハリウッド特有のビジネスです。
西海岸に住んでいるスティーブ・ジョブズや作者のローレンス・レビーであってもハリウッドのビジネスモデルについてはほとんど無知なままピクサーの会社を経営していたのです。

これは、私にとってはものすごい驚きでした。スタートアップとはいえ、経営者として、何で稼ぐのか、どのようなビジョンで進めるのか、それが無いまま会社を持つことができるのでしょうか。

もちろんローレンスがピクサーにやってきて、IPOに向けて準備をする上では、その戦略を寝るのですが、
スティーブ・ジョブズのようなカリスマ経営者がその点をおさえずに、ローレンスが来るまでの10年以上も経営をしていたと言うのがあまりにも驚きでした。

 

そして、ディズニーの強さです。
ピクサーは当初、ディズニーとの間に不平等条約とも言えるような契約を結んで活動をしていました。

もちろんディズニーの視点から見てみれば、どこの馬の骨ともわからない実績も無い小さな企業に対して莫大な制作費を先出しして映画の制作をさせるので、
それなりの権利をもつ必要があるでしょう。
コンテンツの世界のポートフォリオ管理とはそう言うものだと思います。
3割、いや1割当たれば良いと言うレベルの世界だと思います。

しかし、結果的にトイ・ストーリーのような大ヒット作を生み出し、そしてそのキャラクターからストーリー、アニメーションまでは、ディズニーは一切かかわらず全てピクサーが生み出した上に、利益の8割をディズニーが持っていく構造だった。と聞くと流石にそれはおかしいなと考える人が多いとは思います。

 

この状況に対して、スティーブ・ジョブズとローレンス・レビーはディズニーと交渉を仕掛けます。
二人はハリウッドの世界には素人で、人脈を駆使して有識者の協力を得ます。

圧巻なのは、この交渉のスタンスです。
普通であれば、ディズニーと対等に交渉しようとは考えないのでは無いでしょうか?
もちろん、交渉としては対等な条件を出したとして、それがそのまま落ちるとは思わないのでは無いでしょうか。

しかし、驚くほど強烈な交渉を行います。頑固とも言えるほどに。
その結果の交渉の流れは、華麗であり、偶然的でもあり、結果として、今のピクサーという地位を築くために非常に重要だったのだと感じます。
ここでもスティーブ・ジョブズの力を感じます。

この点はぜひ、読んで体感してみると良いなと思いますし、
このロジックの考え方などは、非常に参考になりました。

 

今の仕事に疑問を持っている方へのメッセージ

このピクサーの本は、CFOというクリエイティブでは無い経営、または管理側で入っているローレンス・レビーが書いた本です。

ですので、映画をどう作るとか、ストーリーをどう作るとか、キャラクターをどう作るといった話はありません。
(この本を手にとった時は多少そのようなストーリーがある事を期待していましたが。。)

作者であるローレンス・レビーもこの点における葛藤を持っています。
一つ象徴的な話としては、映画のエンドロールに管理部門の方の名前が掲載されない事に対しての葛藤と強い希望と闘いの話が載っています。
少々感動的なストーリーで掲載されているのですが、どの会社でも直接的に商品やサービスを作る人以外の縁の下の力もちにスポットを当てた話になっています。

さらに、ローレンス・レビー自体が、ピクサーで5年仕事をした後のキャリア変更の話が最後の章では詳しく語られています。
一見、ピクサーとは全く関係ないような彼のその後のキャリア志向、ピクサーを離れ、スローダウンする重要さ、企業戦士から哲学者に至る話が書かれています。

この話は、サラリーマンとして働く我々多くの日本人にとって考えさせられる章だと思います。

 

これほどまでに成功を納めている方が、その先に何を求めるのか。

ローレンスは「人の幸せに関する哲学や東洋思想を学びたい」と考え、模索を始めます。
その決定を促したスティーブ・ジョブズの意見にこんな一節があります。

次にスティーブの口からでた言葉は忘れられない。

「我々の中からそういう事をするやつが出てきて嬉しいよ」

ローレンスはスティーブ・ジョブズがどういう意図でこの発言をしたのか確認できなかったそうです。

 

私は、東洋思想を学びたいとは思いませんが、人の幸せに関する哲学や、自分が真にやりたいと思う事に企業利益を第一に考える事なく取り組む事については、非常に興味があります。
昨今のブランドパーパスやSDGsに注目が集まっている考え方にとても共感します。

 

ピクサーの成功の物語は、ある種資本主義や市場主義の大成功モデルであり、お金の大切さというのを認識させられる話でありますが、
逆説的に、それを得られたとしても、さらに求める先は、金銭的なことではなく、その延長線上には無いという事です。

この感覚は、多くの富豪が歩んでいる道でもあるのかと感じます。

私自身はこのような成功体験ができるとは思っていませんが、そもそも目指すべきところを補正して行くべきでは無いかと考えるきっかけになった本としても有益でした。

 

今日の記事は以上となります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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