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「モノ売り」から「コト売り」へのシフトが実現できない企業

コト売りにシフトできない企業

「モノ売り」から「コト売り」へ企業はシフトしていかないとこれからのデジタルのビジネスを生き抜くことは難しい。
そう叫ばられつくしており、私もそういった関連の仕事は多数やってきました。

既に考え方は、浸透しているとは思います。
しかし、多くの企業において、実際にうまく進行できた事例は少ないのではないでしょうか。

この記事では、そもそも「コト売り」とは何なのか。
なぜ「コト売り」への移行せねばならないのか。
企業において「コト売り」へのシフトはなぜ難しいのか。

についてつまびらかにして行きたいと思います。

「コト売り」とは何か

そもそも、「モノ売り」から「コト売り」にシフトというのはどういう事でしょうか?

いくつか例示してみましょう。

  • 小売業界で言えば、今まで食料品や生活必需品、あるいはファッションやインテリアというモノを売るビジネスでした。
    「コト売り」というのは、買い物をするという体験を売り物にしていくという事です。
  • 音楽業界で言えば、CDや音としてのモノを売ってきました。
    「コト売り」というのは、LIVEやファンとの交流などの体験を提供という事です。
  • 家電業界で言えば、テレビや冷蔵庫といったモノを機能勝負で売ってきました。
    「コト売り」というのは、リビングルームあるいはキッチンで如何に楽しい体験ができるかを売っていくという事である。

このように、総じて今まで物質あるいは資産としてのモノという価値から、
モノはあくまで手段として、その結果得られるエンドユーザーの体験価値にコミットしていく。
というのがモノ売りからコト売りへのシフトという意味合いです。

このようなB2Cにおけるビジネスはイメージわきますね。
B2Bのビジネスはどうでしょうか?
B2Bビジネスも、「コト売り」にシフトしていきます。

たとえば、

  • 航空機のエンジンを作っているメーカーは、航空機製造メーカーにエンジンを売ってきました。
    「コト売り」にするというのは、エンジンにセンサーを搭載し、AIを活用して、売った後の故障を予測するといったサービス改善を行うといった事です。
  • 食べログやホットペッパーといった、レストラン情報サービスは、飲食店向けに広告の枠を売ってきました。
    「コト売り」にするというのは、枠を売るだけでなく、飲食店の予約サービスや、会計システム、アルバイト管理システムをサービスとして提供するといったことです。

どうでしょう?
「コト売り」がどういったものかはわかったと思います。

次に、なぜ「コト売り」にシフトしなくてはならないのでしょうか?

なぜ「コト売り」にシフトする必要があるのか

結論から述べます。
ビジネス収益を最大化するためです。

実はいろんな背景があります。

モノを売って成長しにくくなってきた。
この背景には人口減少というのもありますし、
モノがあふれた中で消費者の体験価値への趣向の変化もあります。

デジタルのテクノロジーにより、提供できるサービスの種類が増えてきた。
今まで体験(コト売り)をサービス提供するのは費用対効果(得られる売上に対するコストの割合)が非常に悪かったのですが、
デジタルのテクノロジーの発展により費用対効果を押さえた形で提供できるようになってきました。

 

これらは、サービスを提供する企業のビジネスモデルを考えるとよくわかります。
先ほどの事例からB2C、B2Bそれぞれ一つとりあげて、見て行きましょう。

B2Cサービス:音楽業界の場合

デジタルの発展により、かつてCDの販売で謳歌した音楽ビジネスは大きくシュリンクしました。
企業としてビジネスを伸ばしていくには、グローバルに音楽を売るという方法か、音楽以外でマネタイズする方法を考える必要があります。

日本における一つの大成功モデルは、AKBモデルでしょう。
ファンにより近いアイドルとして、ファンとのコミュニケーション、ファンからすれば「アイドルとの体験」がサービスとして提供されています。
総選挙というモデルやLIVEといった体験を提供する形でマネタイズしています。
CDというモノを購入するのではなく、アイドルとの交流やLIVEでの盛り上がり、自分の推しているアイドルの成長といった体験にファンはお金を払っているのです。

B2Bビジネス:航空機のエンジン製造メーカーの場合

先に挙げた航空機のエンジン製造メーカーでは、センサーを取り付ける事により、それまで予測ができない故障発生タイミングを、検知しやすくなりました。
これにより、保守サービスの精度が向上されます。
しかし、サービスはそれに止まりません。
航空会社においては、エンジンなどの不調により、予定通りの航空運行に支障をきたす、あるいは、離陸後に問題が発生し、予定外の空港に着陸するといった被害は年間数兆円にも登っていました。
このエンジン製造メーカーは、その被害額を数十%削減する事にコミットするサービスを提供します。

これは、センサーからのデータを分析する事で実現できるサービスです。

 

どうでしょう?
「コト売り」にシフトすることで大きなメリットがあるのです

企業が「コト売り」にシフトする事が難しい理由

コト売り。というのが何なのかは理解いただけたとおもいます。
しかし、そのコンセプトを理解していても実現できている企業は少ないのが実情です。

なぜ、コト売りを実現できないのでしょうか?

いくつかの企業をコンサルティングしている中でいくつかパターンがあることがわかりました。

  • パターン1:そもそも「どのようなサービスを考えればいいのか」がわからない
  • パターン2:どのように売ればいいのかわからない
  • パターン3:上記プランができても、「コト売り」へのシフトができない

一つ一つ解説します。

パターン1:そもそもどのようなサービスを考えればいいのか、わからない。

このレベルに留まる企業は実は数ないです。

顧客(以後エンドユーザーという意味を込めてカスタマーと言う)が何を求めているのかと言うのは、小売やサービスを提供して来た企業にとっては、ある程度イメージできているし、ポイントも押さえらています。

唯一難しいのは、カスタマーにサービスを提供しているように見えて、実は別の企業からお金をもらっているような会社です。
先に挙げたような、B2Cビジネスをしているように見えて、実はB2Bビジネスをしている。といった事例は特に考え方は難しいです。

例えば、アパレルメーカー。良い服を作ると言うことにFocusしているが実際には、百貨店やECサイトに卸しているだけと言うケース。

あるいは、マスメディア。カスタマーに楽しんでもらうコンテンツを作っているようで、売上は広告ベース。

意外かもしれませんが、こういった企業は実は驚くほど、個としてのカスタマーが見えていないのが実際です。
マスとしてのカスタマーは捉えるので、トレンドの把握力は高いのですが、カスタマーを個としては見えていないことに大きなケイパビリティのGAPが存在します。

もう少しわかりやすくいうと、20代女性の全体的な好みはわかっていますが、AmazonのようにIDがXXXの方は、どのような商品が好きで、どんな動画が好きで、だからこういうリコメンドをするんだというような事は、データもありませんし、どのようにやったらいいかわからないのです。

しかし、上記のような企業はやはり少ないです。

多くの企業は既に進められており、
どのようなサービスを提供したら良いかを考えるスキームとしては、(目新しくもないのですが)ペルソナを作り、カスタマージャーニーで考えると言う手法が用いられていました。
この手法が近年では、より多くの企業にも用いられて来ており、定着化しています。

まだ、やった事がない。と言う企業があれば、かなり遅れていると考えた方がいいでしょう。

パターン2:どのように売ればいいのか、わからない

ここには、大きく二つハードルがあります。

一つは、ビジネスモデル。
もう一つは、それを実現する体制です。

ビジネスモデル

「モノ売り」のスキームでは、今までモノに定価をつけて売りきりでやって来ました。
競合よりも機能を高くし、Priceを決め、プロモーションや販路を押えれる。
そこを計画して実行すればよかったのです。

しかし、カスタマーがどんな”コト”に価値があるかと言う事がわかり、提供すべきサービスがわかっても、一体どのようなビジネスモデル、特にマネタイズモデルにすべきかを作るのは難しいです。

なぜ難しいのでしょうか。
それは、「モノ」という物理的なものとお金を交換するのは、マネタイズモデルとして非常に簡単な発想です。
しかし、提供する「コト」で、お金くださいというのは難しいのです。

例えば、Googleは、検索を売ってはおらず、インターネットから情報を見つけると言う体験価値を提供している。これはわかりやすいですよね。
ではどのようなビジネスモデルかと言うと、広告でマネタイズしています。
これは、B2Cの体験価値を提供し、B2Bでマネタイズしているという事です。

あるいは、アマゾン。
もちろんECで購入する事で売上をあげているが、彼らの秀逸な顧客体験価値はアマゾンプライムにああります。
届く時間が短いと言うだけではありません。コンテンツの無料での享受や様々な特典的なサービスがバンドルされています。カスタマーの体験価値を最大化しているのです。

マネタイズモデルとしては極論すると二つのパターンしかありません。

一つは、とにかくユーザーを集めます。ユーザが集まったらマネタイズの方法を考える。GoogleやFBは広告でしたし、アマゾンはEC。アップルは様々なモノ・コト売り。リクルートはマッチング。ユーザが集まればマネタイズの方法は結構あるのです。
一方で、同じような事をするのであれば、ユーザの規模の経済がきいて、1位が総取り、2位以下は大きく間をはなされます。
だからスピードが重要なのです。その市場で常にトップを走り続けないとならないのです。

二つ目は、サブスクリプション(月次定額)を提供する事。
ネットフリックスは月額で見放題。
アマゾンプライムも月額制。

今までのモノを売る毎の都度課金形態では、その一回渡すことにFocusされていました。
しかし、サブスクリプションをする事で、カスタマーは継続的に使っていただけますし、逆にカスタマーが飽きてしまうと離れてしまいます。
このため、常にサービスをUpdateし続ける事が大切になります。

これもまた、競合他社との差をさらに広げる事につながります。

実現する体制

もう一つはこれらをサービスとして実現する体制

上記の通り、ビジネスモデルは完全にワンタイムの売りきりではなく、継続的にカスタマーと付き合っていく運用モデルとなります。
そこで必要となる組織機能・体制は大きく異なります。

特に大きく変わる点として、
サービスを継続的に運用をする上で、カスタマーの声や満足度の分析、それに見合ったアクションを打つことをする必要があります。
いわゆるPDCAサイクルを如何に高速に回し、サービスをより魅力的にしていくかがポイントである。

この成功事例は例えば、ゲーム会社です。
従来家庭用ゲームなど売り切りモデルでした。
しかし、現在主流になりつつあるのは、無料で始められるスマホゲームです。
家庭用ゲームは市場に投入するまでが勝負でしたが、スマホゲームは市場にリリースしたところからが勝負で、ユーザが離れないように常に様々なイベントやキャンペーンを考えてファンの熱量をコントロールしています。

この売り切りモデルから継続運用のシフトが困難を極めるのです。
その内容を見ていきましょう。

パターン3:プランはできても「コト売り」へのシフトができない

これが、本質的な問題です。
アイディアやどうすればうまくいくかの青図はできても、移行が困難を極めます。

特に現業のビジネスが成功していればいる企業ほど難しい傾向にあります。

これは、やり方としては、本当にスタートアップにまず始めさせて、それを買収する方が圧倒的に早いです。(スタートアップを志す若者は覚えて置くといいと思います。既にやっている大企業と同じ分野でも、ビジネスモデルが異なれば破壊できるのです。破壊しなくともそこそこまでやって、その大企業に売るのが一番良いでしょう)

なぜ難しいのでしょうか?

その理由は三つあります。

既存のビジネスを一時的に壊すことになるからです。
さらには、コト売りは、収益化までに時間がかかります。
そして、そもそもどのように運用すれば良いかわからないのです。

これは自分の身になってみればよくわかります。

例えば、サラリーマンなら、現状月給をもらって生活していますね。
その職を一旦壊して、別で稼ぎましょう。
1年くらい我慢すれば、さらに将来に渡って給料がもらえるようになりますよ。ただ、そのためには、今までやってきたこととは別の能力を勉強してつけてもらうことになります。もちろんそれがうまくいくかは誰も保証はできません。やってみないとわかりません。

と言われて、それを決断できる人がどれだけいるでしょうか。
また、独身ならまだしも。家族も含めて合意をとって判断できるでしょうか。

まず即決する人はいません。
100人いたら、数人は時間をかけて決断しますが、8割はもう少しうまくいくかどうかを検証したい。と言います。
そして、手遅れになります。

そして、あの時やっていれば、アイディアは思いついていたのに。
と後悔するのです。しかし、アイディアが重要ではなく、どう実行するかが極めて重要なのです。

一方で、チャンスでもあります。
アイディアが思いついても、最後までやりきるという人は、特に日本においては、上記の理由で極めて少ないからです。

大企業は、社員をたくさん抱えていますし、既存の成功体験も成功事業もあります。即座にそれが無くなるわけでもありません。
そのような中で、悪く言えば博打だ。と言えるような事業に賭けられる人は少ないのです。

端的に言えば、失敗した時に失うものが大きすぎるのです。
しかし、よく考えて見ましょう。
失敗しなくても、変化しない事で、失っていくというのが現実なのです。

あの時やっていれば。
というのを繰り返して行くのでしょうか。。

皆さんの会社ではどうでしょうか?
同じような実態があるのではないでしょうか?

日本の企業からイノベーションを起こすべく、勇気を持って立ち上がっていただきたい。
そのような会社を支援したいと思います。