こんにちは。浮世絵大好きkurokoです。
町田市に版画専門の大型美術館があります。
今回はその町田市立国際版画美術館で行われた時代を超えた3代にわたる浮世絵家、歌川広重、小林清親、川瀬巴水の比較展覧会が開催されました。
まず、この3人の浮世絵師がどの様な年代を生きていたのでしょうか?
- 歌川広重 1797年〜1858年 江戸時代末期を代表する浮世絵師ですね
- 小林清親 1847年〜1915年 江戸末期に生まれ、明治時代を代表する浮世絵師です。
- 川瀬巴水 1883年〜1957年 明治時代に生まれ、大正、昭和時代を代表する浮世絵師です。
広重が生まれてから、巴水が無くなるまで約170年あまりあります。正味150年間の歴史の変化が3人の浮世絵師の作品を見るとわかるということになりますね。
特に江戸末期から昭和の戦後にかけては、日本も大きく変化してきた時代です。
その時代の変遷が同じ浮世絵という画法でありながら、変わっていく姿は圧巻です。
前回、テーマ別にこの3人の浮世絵を比較しました。まだ見ていない方はこちらから。
➡️ 新旧浮世絵画家比較!歌川広重 小林清親 川瀬巴水
今回は各浮世絵家の個別作品を紹介していきます。
それでは、作品を深掘りしていきます。
歌川広重
まずは、歌川広重の作品から見ていきましょう。
歌川広重は江戸時代に活躍した浮世絵師で葛飾北斎に並んで最も有名な浮世絵師の一人ですね。
特に東海道五十三次は有名です。
あまり説明するまでもないですが、簡単に経歴を紹介します。
1797年、江戸の八代洲河岸の火消しの子に生まれる。
1812年、若干15歳で歌川豊広に入門。師匠の名前を一文字もらい号を広重とした。役者絵、美人画を中心に活動を続ける。
1828年、師の死後、風景画を主に制作。
1833年、東海道五十三次を制作。
残した作品は2万点とも言われるが、代表作として、「東海道五十三次」、「六十余州名所図会」、「名所江戸百景」、「不二三十六景」、「金沢八景」、「近江八景」などある。
海外での評価が高く、特に藍色の美しさは有名で「ヒロシゲブルー」という呼称も付けられるほど。
東海道五十三次之内 日本橋
東海道五十三次の中でも一番最初がこの日本橋です。
これは早朝の風景でしょうか。町の向こうが赤らんでおり、朝日がのぼる様子が。
そして大名行列の様な一行がまさに日本橋を渡っていますね。
よく見ると、右側に犬がいますね。この頃も犬が飼われていたのでしょうか。
東海道五十三次之内 庄野
こちらも広重の作品ではよく目にする有名な作品です。
夕立の様な雨が降っています。この雨の表現が秀逸と言われています。
浮世絵のかっこいいところは、絵のサインと捺印されているところがありますね。
これらも絵の構図としてデザインされている様に感じます。
東都名所 吉原仲之町夜桜
月の表現は、巴水の作品がとても素晴らしいですが、広重の影響を受けているのかもしれません。
月夜に映える夜桜の表現も、その近辺にいる着物の女性も美しいですね。
名所江戸百景 亀戸梅屋敷
ゴッホも模写したことで有名な作品。
画面いっぱいにクローズアップされた梅の木と、上半分が赤く染まり、下半分が緑に染まる構図が独特な雰囲気です。
梅の木の質感が、梅だな。と感じさせてくれています。
名所江戸百景 深川万年橋
題名が「深川万年橋」ですが、描かれているのはクローズアップされた橋で、端からの景色が描かれています。
亀、おそらくミドリガメが紐に結ばれて吊るされています。不思議な構図ですが、万年橋と亀は万年をかけた作品になっています。
隅田川の奥には富士山が見えますね。
ちょうど夕暮れ時で太陽が沈む様も見て取れます。
ここまでが歌川広重の作品です。
江戸時代の風景を擬似体験できるとともに、いろいろ見ていると面白さが湧いてくる作品ばかりですね。
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小林清親
さて、次は小林清親(きよちか)です。
清親は江戸時代末期に生まれ、明治時代から大正時代にかけて活躍した浮世絵師です。
経歴を見てみましょう。
1847年、江戸本所御蔵屋敷内の下級役人の子として生まれる。
1875年、明治8年ごろから絵師としての活動開始
1876年から1881年にかけて「東京名所図」を制作
街を照らすガス灯やランプ、月光やホタルの光など、光の表現が巧みで「光線画」という名称も付けられた。
従来の浮世絵は輪郭線を用いて表現されるのが一般的だったが、水彩スケッチの様なタッチやクロスハッチングの様な陰影で表現する方法を用いているのも特徴的。
また、「武蔵百景之内」、「日本名勝図会」は江戸期の手法にもどる様な制作で作られた。
海雲橋 第一銀行雪中
現在の兜町にあったと重される第一国立銀行の建物です。
第一国立銀行は現在大河で有名な渋沢栄一が創設した最古の銀行です。そして現在のみずほ銀行です。
手前に見えるのは海雲橋。現在は埋め立てられています。
画面真ん中にいる女性は傘をさしていますが、清親の傘の使い方の特徴です。他の作品にも出てきます。
本町通夜雪
明治・大正期を代表する馬車とガス灯が描かれています。
ガス灯と馬車の光があるところに雪が降っている様子が描かれ、実際の情景を想像させます。
左側の傘を持った人物は広重の夜之雪を思い起こさせ、影響をみて取れると言われています。
右側にはワンちゃんも出てきますね。画面真ん中の悠々とした馬が印象的です。
あまり考えたことはなかったですが、馬車にもライトが付いていたんですね。
どんな仕組みで付けられていたのでしょう。(電池、バッテリーがあったと思えないので。。)
千ほんくい両国橋
夕刻の空が青からピンク、紫に染まっていく様とその空の色が水面に反射している様子がとても美しい一枚です。
手前に防波のために刺された千本くいのクローズアップと、両国橋が画面真ん中を突っ切る様が印象的。
現在の両国橋はこんな感じです。
天王寺下衣川
真っ暗な夜に人工的な光と蛍の光を表現している作品です。
天王寺は現在の台東区谷中に位置していますが、下衣川など具体的な場所は定かではない様です。
建物の中に目をやると、家族で楽しむ様子が影絵的に表現されています。
以上が小林清親の作品です。
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川瀬巴水
最後は川瀬巴水(かわせはすい)です。
巴水はに生まれ、大正時代から昭和時代にかけて活躍した浮世絵師です。
大正から昭和にかけては、既にカメラも行き渡り、印刷技術も進歩が進み、
風景画としての浮世絵の価値は別のところに見出していかねばならない状況にありました。
そんな中活躍したのが川瀬巴水です。
どんな浮世絵師なのでしょうか。経歴を見てみましょう。
1883年、東京の芝に生まれる。
本名は文次郎。10代から画家を目指し当初は日本画を学ぶ。一時は家業を継ぐも夢を諦めきれず25歳で家業を妹夫婦に任せ、絵画の道に。遅い始まりで洋画を目指すが、再度日本画の世界へ。29歳で「巴水」の画号を得る。
1918年、伊藤深水の影響で版画家に転向。以降生涯、風景版画家として全うした。
全国を旅行し数百点とも言われる版画を残しているが、シリーズ物が非常に多い。
東京十二題、東京二十景、旅みやげ第一集〜第三集、日本風景選集、朝鮮八景など。
また、スティーブ・ジョブズが一目惚れし、多数コレクションしている。
川瀬巴水については別途こちらの記事も参考になります。
➡️ 近代浮世絵師 川瀬巴水展に行ってきた!
➡️ 近代浮世絵師 川瀬巴水さんの絵が好き! スティーブ・ジョブズをも魅了!
東京十二題 深川上の橋
上之橋は現在の清澄白河あたり、仙台堀川が隅田川に合流する手前あたりにかけられていた橋です。
ですので、この構図では、画面手前が仙台堀川で、橋の奥が隅田川との合流地点、そのさきに見える対岸は隅田川沿いの建物群になります。
現在はこの上の橋はありません。1984年に排水場建設に伴い撤去されたとのことです。
巴水は橋の絵をたくさん書いていて、どれも美しいのですが、
この絵の好きなところは、夕焼けのピンク紫色。奥に見える暗みがかった建物。
手前にあるズームアップされた橋が額縁の様に後ろの船と夕映の建物を際立たせている様に感じます。
東京二十景 馬込の月
すっかり都会になった東京都大田区の馬込です。
これは北馬込二丁目にある天祖神社境内にあった三本松を描いたそうです。
この絵をめぐって巴水のエピソードが残っています
六年前でしたかここへ引っ越して来た時に、地元の人があの画を借りに来ました。というのは画でも御覧の通りの亭々たる見事な四本の大松があはや鉄道の煤煙のために枯れかかろうとしているから、何ぞ早く電化してくれるようにと陳情に行く、その材料にと求められたのでした。今は二本になりましたが、まづ望みを達したという可きでしょう
しかし、その後この三本松(上記文章では四本とありますが)は失われてしまいました。
残念ながら失われてしまいましたが、絵には人の感情を動かし、残したいと思う気持ちを醸成するのと、たとえなくなってしまったとしても、そこにあった景色を想像させて、また感情を動かす力があると思います。
旅みやげ第一集 仙台山の寺
馬込の月もそうですが、こちらも夜の満月。
満月の月明かりで暗い夜でも寺が浮き上がる様な表現です。
一色の色の世界がなんともカッコいいです。
旅みやげ第二集 金沢下本多町
まるでジブリのトトロに出てくる一コマの様な景色。
セミの音が鳴り響く夏の暑い昼下がり、壮大な入道雲と巨大な紅葉樹。
なんとも懐かしい景色。久しぶりの夏休み。こんな田舎に出かけたい。
よく見ると、右の土壁の色には、丸い傷の様なものがあります。
これはバレンで摺る時にできた模様の様です。よく見ると様々なところにバレンのあとが確認できます。
版画に自然な表現を生んでいます。これも浮世絵技術のなせる技ですね。
旅みやげ第三集 周防錦帯橋
深川上の橋と同様の構図で、こちらは山口県周防の錦帯橋です。
石の土台が特徴的で、木の太鼓橋も描かれている人と比べると壮大さがわかり、実物をみたくなります。
この浮世絵に限ったことではないですが、巴水の浮世絵は水に映る姿も美しいですね。
なお、この橋は広重や北斎も描いた有名な橋とのこと。
ちなみに現在も健在です!
日本風景集II 関西篇 大坂宗右衛門町の夕
お茶屋文化が広まった大阪「ミナミ」の様子。
女性を連れて歩く男性や、着飾った二人の女性が歩いている様子が花街の様子を表しています。
この浮世絵も地面などバレンの後がうまく表現されていますね。
個人的に好きなのは、電柱です。
江戸時代にはなかった電柱。今は当たり前の存在ですが、実は現代の特徴的なものな気がします。
最近電線などは地中に埋められて整備されて来ました。電柱はもう少し将来にはとても希少で懐かしさを表現してくれる存在になっているやもしれません。
町田市立国際版画美術館
本記事は町田市立国際版画美術館での展覧会をベースに記載しています。
町田市立国際版画美術館は、浮世絵の作品展を多数実施しています。
浮世絵好きにはたまらない美術館ですね!
町田市立国際はんが美術館は都心から1時間程度で行けます。
駐車場はもちろんありますし、駅からは送迎バスも運行しています。
今回の記事は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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