こんにちは。DNVB(Digital Native Vertical Brand)大好きkurokoです。
みなさま、冒頭で書いたDNVBってご存知ですか。
話題になって結構経ちますが、デジタルネイティブで設立されたスタートアップ企業(スタートアップでなくとももちろん含む)で、
かつ、Vertical=垂直統合、つまり、製造からユーザに届けるまで全部を担うブランドという意味です。
以前のブランドはデザインや企画はやりますが、製造を外出ししたり、販売をデパートやamazonなどでしたりしています。
これに対して、どこで作るかまでをこだわり、ECや直店舗を持って販売しています。そしてamazonや楽天などには出さない。
通常、amazonや楽天などに出せば、顧客が集まるところなので、検索され売上も拡大するはずです。
ですが、そこに出さない。
それはなぜか?
これは山口周さんの「ニュータイプ」などの本を読んでなるほどと思ったのですが、
「機能」を売るのではなく、「世界観」を売っているのです。
言葉を変えると、
「役に立つ」を売るのではなく、「意味がある」を売っているのです。
ちょっとわかりにくいですよね。例示します。
車を考えてみましょう。
TOYOTA、ベンツ、フェラーリとあったとします。
機能を売っているのはTOYOTAです。壊れにくく、最高級の品質です。顧客は快適な移動が約束されています。
世界観を売っているのはフェラーリです。顧客は快適な移動ではなく、フェラーリが好き。フェラーリに乗っている自分を買っているのです。めちゃくちゃ壊れやすく壊れたら高くつき、かつ車高が低く走れる場所に制約があります。
機能を売っているものと世界観を売っているものの違いが分かりましたでしょうか?
話は続きます。
機能の違いは昔は大きかったですが、情報化社会が発達し機能差での勝負はできにくくなってきました。
今、重要なのは、「意味がある」という事なのです。
機能を売りにしていると、比較されます。価格comに行き、機能と金額で比較され、安くて良いものが買われます。
企業は永遠の競争に疲弊します。
意味を売りにしていると、顧客は価格comで比較することはありません。ファンなんです。他のブランドではダメなんです。フェラーリであることが重要なのです。
DNVBが注目される背景はこんな事があります。
上記より詳しく知りたければ、山口周さんの本は参考になると思います。
今日は前置きが長くなりました。
この世界観を大切にするブランドは、実は原価を公開するという企業が増えてきています。
原価を公開するということは、利益も丸裸になります。
一体、なぜそんな事をするのでしょうか?
今日はここについて深掘りしていきたいと思います。
なお、DNVBについては、以下の記事も参考になります。
まだ読んでいない方は合わせてどうぞ。
➡️ D2Cの波 -人はストーリーを買いたがっている
世界観を買う人は社会課題への意識が高い
今まで話してきたDNVBの分析が様々されてきています。
その中で、世界観を重視するユーザーの傾向として、社会への貢献や、社会課題に対する意識の高さ、あるいはSDGs(Sustainable Development Goals)への意識の高さが指摘されています。
これは感覚的にも「そうだな」と思える事象ではないでしょうか?
企業ブランドや商品ブランドに熱狂しているファンは、やはり人間的にも美しいものを好みます。
それは、今の時代、見た目だけではありません。企業の行いや、経営者の人柄に及びます。
そして、情報化時代以前は、企業の行いや経営者の人柄などはメディアが取材しない限りはほとんどオープンになることはありませんでした。
例えオープンになっても、それがそう簡単に広まることはありませんでした。
今、ネットが発達しSNSで情報が即座に拡散される時代、芸能人はもちろん、企業も都合の悪い情報を内部で隠しきることは不可能なのです。
こうなってくると、ブランドを愛するファンは、ブランドの裏にある良くない情報に接する機会が非常に多くなります。
そして、それを知ったファンは、興ざめしてファンである事をやめてしまうのです。
この経験を繰り返して行くと、
世界観を重視するユーザーは、「社会への貢献」や「社会課題に対する意識」、「SDGs」への意識が結果的に高くなるのです。
結果として、企業はここを重視して行く必要が出てくるのです。
ブランドが製造工程を公開する理由
世界観を買う人は、社会課題への意識が高いことはわかりました。
ここから、ブランドのファンになったつもりで想像してさらに深掘りしていきましょう。
ブランドのファンは、そのブランドが美しくない行いがあれば興ざめします。
ファンを大切にするブランドは、外見では見えない部分においても美しくなろうとします。
そして競合の失敗から学びます。
・見た目が美しい洋服も実は中国やベトナムで低賃金で若年の労働者が搾取されて作られていた。
・品質管理が徹底されておらず、異物が混入されてしまった。
・ある商品を消費すると地球環境への負荷がこんなに高い。
こんなニュースを見たことはありませんでしょうか?
どれも名だたるブランドがやってしまった問題です。
そして、せっかくついた企業の信頼、ファンは一気に離れていきます。
世界観を売るブランドはこのような教訓に学んでいます。
一見、ユーザーからは見えない製造工程を誠実に設計しよう
地球環境への負荷が少ないような材料を使おう
そして、ここまでくると、むしろブランドは、製造工程をファンに公開した方が良いという発想になります。
そしてそういう目を入れることでサステイナブルな品質維持にもつながあります。
ファンが気にするのは企業のお金の使い方に及ぶ
ファンはブランドがどのように服を作っているのかも気にし始めているという話をしました。
ここからさらに、ファン心理に戻り深掘りしていきます。
みなさんは、何かモノを買った時に、買った時に使ったお金がその後どうなるのか?
気にしたことはありますか?
おそらく、ほとんどの方が気にしないのではないでしょうか?
お金には色がついていません。
自分のお金がその後誰に渡ったのかわかりません。
お店で購入した際に使ったお金が、その後お店の何の出費に使われたのかわかりません。
わからないから、気にしても仕方ありません。
それが当たり前でした。
しかし、同じような機能・デザインの椅子があり、どちらかを買うとします。
Aブランドの椅子:10万円
Bブランドの椅子:11万円
これだったらAブランドの椅子を買う方がほとんどでしょう。
しかし、Bブランドの椅子は11万円するのですが、その椅子は実は、消えゆく日本の工芸職人とコラボした商人です。
その職人がひとつひとつ手すりの部分をきれいに加工され、ロットナンバーがふられているものだったとします。
この椅子はそういった職人の心が込められており、この椅子を買うと4万円がその職人の手に渡り、今後も継続的に活動できるというストーリーがあったとします。
こうなってくると、Bブランドの椅子を選ぶ人も出てくるでしょう。
なぜBブランドを選んだか。
職人のストーリーが好きだから。というのもありますが、自分が購入した金額の一部がその職人に渡り、「良いことにお金が使われるから」という理由になるのではないでしょうか。
こうなってくると、あらゆるモノを買うときにその先にこのお金はどのように使われるのだろう。と気になってきます。
このような事が今後DNVBに広がれば、
「良いことにお金が使われる」モノを選ぶ。
という消費活動が一般化してくる可能性が高いと思います。
企業はこのことを念頭に置いて、今後商品やサービスのブランドを考えて行った方が良いという話です。
次の章では、すでに世界観を売っているブランドが実際に製造工程の公開や原価(何にお金をどのくらい使っているか)について公開している事例などを具体的に深掘りしていきます。
世界観を売る企業(事例)
ここでわかりやすいように2つの世界観を売るDNVBの事例を紹介します。
Everlane
Everlaneは、極端に「透明性」を推し進めています。
まずは、生産した工場のことについて細かく紹介しています。
工場との出会いやオーナーのことについて、ストーリーが描かれています。
製造工程にも関わっている人がいて、物語があります。
私たちは、この物語を知ることで、単に「かわいい洋服」という見た目以上に深い愛着感がついていくのです。
工場での製作の様子や、生産者の笑顔などが掲載されています。
売れ残りは捨てない
二つ目にすごいのは、売れ残り商品を一切捨てないという点です。
購入者に値段を決めて購入してもらうなど、作った商品を捨てない取り組みを様々やっています。
これまでのアパレルブランドでは、ファンを確保するために、
希少性を確保し、高級感を維持するために、値下げは絶対に行われませんでした。
そして、原価や生産状況は決して明らかにされることはありませんでした。
その真逆を行く戦略を取ることで、逆にファンを確保することができたという結果にたどり着きます。
原価を公開している
私もWebサイトを見て驚いたのは、製品に要した原価の金額を明確にしています。
上記の商品(カシミヤマフラー)では、定価が6,500円に対して、原価は3,050円、さらにその内訳が提示されています。
10YC
二つ目は日本のDNVBです。
10YCもホームページで生産者・生産工程・価格を公開しています。
10YCのホームページでは、メディアを持っており、生産工場を取材しどんな人がどのように作っているのかを公開しています。
また、長く使ってもらうために、カラーリフォームなどの工夫をしています。
ファンが自分が着る服についての理解を深めるためのコンテンツを用意し、その世界観に共感してもらいさらにファンになってもらうというサイクルを回しているのです。
ミナペルホネン
もう20年前に、このコンセプトの先人を切ったブランドがあります。
デザイナーである皆川明さんの考えは、流行に左右されずに長く使われる服、物語が宿る服、生産者との繋がりを大切にする。というコンセプトはまさにEverlaneよりもはるかに早く実現してきたと思います。
ミナペルホネンは他の二つとは少し理由が異なります。
品質を追い求めた結果、生産者との連携を強くし、結果としてその情報を知りたいという方が多く、公開してきているというブランドです。
ミナペルホネンの特徴は、生地からの生産にこだわっている点です。
タンバリンを代表とする刺繍は生産者との共同開発により何年もかけてようやく実現させた製法とのこと。
自ずと生産者との連携を深めていきました。
また、ミナペルホネンが愛される理由の一つに、流行を追わずに長く使われる服をコンセプトとして明確に打ち出している点があります。
通常、ブランドは毎年、季節単位でのコレクションが開かれ、そしてその年の流行が決まり、それに合わせたデザインが各ブランドで作られます。
次の年にはもう流行遅れとなって、着ることはありません。
また売れのこりの服も、ハイブランドであればあるほど、値下げのセールもされずに焼却処分されてしまいます。
このような事実が報道され、トラディショナルなブランドに疑問を抱く人も増えました。
そのようなブランドの傾向にいち早く疑問を呈し、長く使われる服をコンセプトにしたのが皆川明さんなのです。
ミナペルホネンについてはこのブログの別記事で詳しく紹介しています。
➡️ 詳しくはこちらの記事を参照ください
本日の記事はここまでです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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